喫茶店グラフィティー余話

  • 2020.05.27 Wednesday
  • 11:58

 一昨日、学生風の若い人が、わが社のオフィスに立ち寄り、私の著作『さっぽろ喫茶店グラフィティー』(亜璃西刊行)を買い求めてくれた。私からみたら孫みたいな若い世代に、この本が読み継がれるなんて、嬉しい限り。「世の中、捨てたものじゃない」と、すっかり気を良くしてしまった。

 そもそもこの本が世に出たのは、2006年。今から14年前のこと。かつてタウン情報誌やベストセラーとなった『札幌青春街図』など街の本をいくつも造ってきた私は、1970年代から80年代の喫茶店について少し詳しかった。普段から書籍編集者の井上哲に、「昔はああだった、こうだった」と無駄話をしていると、「もっと聞きたい、知りたい」という。それなら雑誌か新聞で連載しようかなとぼんやり思っていると、朝日新聞夕刊の文化面がリニュアルされることを元タイムスの論説委員で友人の宮内令子さんが教えてくれて、担当の阿部八重子さんを紹介してくれた。それからトントン拍子で連載が決まり、2003年9月からスタート。好評につき単行本化したものの、店の大半は閉店している。同世代ならまだしも、遅れた世代にも支持されるとは思っても居なかった。

 それにしても、対談に出て下さった店舗デザインの第一人者である今映人さんや直木賞作家の藤堂志津子さんは、若かった。もちろん私も街も、今より若かった。2003年2月といえば、JRタワーの7階に札幌シネマフロンティアがオープン。このシネコンは東映、東宝、松竹という大手映画会社が日本で初めて手を取り合って誕生させた画期的なシネコンだった。そのため、道内一と謳われたロードショー館だった日本劇場や東映会館など映画館が次々と閉館。それに伴い、一流会社の多くは駅前ゾーンへ移転し、新しいデパートも誕生したため、大通りや狸小路エリアから商圏が徐々に駅前へ移った。と同時に喫茶店も、街中からどんどん姿を消したものだ。

 そんな街の変遷を思い出しながら、これからもこの余話を機会があれば、書いていこうと思う。

 

ラフィラの閉店に。

  • 2020.05.22 Friday
  • 17:40

  2020年5月17日、ススキノで長らく愛されてきた商業施設「ススキノラフィラ」が遂に閉店した。思い起こすと、ここが松坂屋として華々しくオープンしたのは1974年のことだった。本州資本の高級なデパートというイメージで、ビンボーで若かった私には、手の届かない高級なブティックが軒を並べていたもの。だからもっぱら、地下2階の飲食街を利用。開店時には、南4西4で路面店だったおでんの老舗「一平」がオープン。白髪の初代が2代目と共に采配を振るい、いつも満席で席を確保するのに苦労した記憶がある。当時、特製の茶めしは、なんと茶碗一杯50円。また、行きつけの酒場のママが愛した五目焼きそばの美味しいラーメン店「喜龍」も入居していたっけ。私は、ここで良く味噌ラーメンを食べた。多分、当時のラーメン代は350円ぐらいだったと思う。あの頃は、ラーメン代と靴磨き代、そしてタクシーの初乗り代が同じと言われていたものだ。

 やがて、ヨークマツザカ、ロビンソン百貨店と名称を変え、ラフィラに落ち着いたのは2009年。名前を変える度に庶民的な色合いが濃くなり、私には利用しやすくなった。地下1階のスーパーマーケットはもとより、100円ショップや1階のコスメ、本の文教堂、上階の中華料理店など、よくお世話になった。また、ススキノが初めての人と待ち合わせする時、駅前通りに面した1階の入口を選んだもの。ガラス越しに外が見えて、ベンチもあるから便利だったのだ。割と生活に密着していた商業施設なので、五番館の建物が壊された後の喪失感とは少し異った気分に、今は陥っている。「都市は破壊と創造を繰り返す」とわかっていても、見慣れた風景が変わることに未だにある種の抵抗がある。数年後、このスクランブル交差点の一角、ニッカの看板の真向かいに誕生する建物が、どんな街角の風景を生み出すのか怖くもあり、楽しみでもある。

桜の絨毯

  • 2020.05.21 Thursday
  • 16:47

 桑園にある私のマンションのすぐ近くに、小公園がある。循環器の病院へ行くとき、いつも通り抜けするのだけれど、先日は濃厚なピンク色の八重桜が満開で美しいなんてものじゃない。桜吹雪が舞う中、保育園の可愛いらしい園児たちが遊ぶ地面を眺めてみると、そこにも桜の花びらが絨毯のように敷き詰められていた。どこもかしこもピンク色で、巣籠りの暗い色に馴らされている身にとっては嬉しい限り。今年は恒例となっている「女性だけの花見」も出来なかったので、家のすぐそばで花見ができるなんて幸運だ。

 また、出勤途中の植物園の木々には、いつの間に目に鮮やかな緑の葉がこんもり。途中の道路沿いには紫のライラックが咲き、ようやく本格的な花の季節がやって来た。ガーデンの専門家が、「北海道は短い期間に数多くの花が咲くので、ダイナミックに纏まったガーデンが演出できるのが魅力です」と言っていたけれど、さもありなん。自粛が解けたら、市内の花の名所をゆっくり回ってみたいものだ。そのためにも、コロナなんかに負けないぞ。

大林宜彦監督のこと。

  • 2020.05.17 Sunday
  • 17:42

 自慢じゃないけれど私は、狸小路5丁目の狸小路ビル3F(1983頃)、南2西6の栄ビル4F(1987)、現在いるメゾン本府7F(2005頃)と、オフィスで3回も火事に遭遇している。いずれも少し煙に巻かれたくらいで無傷に近く、不幸中の幸いと言われている。が、人生に1度も遭わない人がいるのに、無傷とはいえ3回も遭うのは運が良いのか悪いのか……。ひとえに家賃の安さに目が眩み(実はビンボーだったから)、老朽化したビルの一角を事務所として借りていたせいだろう。その証拠に、前二つのビルは、大分前に取り壊しで姿を消している。

 ちなみに栄ビルの火災後、丸焼けになった2階の一室をのぞき見したところ、部屋の柱時計はダリの絵のようにひしゃげ、辺り一面は焼け野原さながらで見るも無残。映画の美術さんが造るセットと一味違って、余りにリアルな迫力に目を覆ったものだ。丁度その時、ロケハンで札幌を訪れていた大林宜彦監督が、娘の千茱萸さんと一緒に栄ビルの我がオフィスにいらした。幽霊とホラー好きの大林監督にその話をすると「焼け跡を見てみたい」と切望された。そこで2階の現場にご案内すると、即座に「できれば撮影に使いたい!」と言われたことが、今でも懐かしく思い出される。その大林監督は、今は遺作となってしまった「海辺の映画館―キネマの玉手箱」公開前の4月10日に亡くなられた。享年82。最期まで映画監督としての使命を果たされた現場を描く、壮絶なドキュメンタリーは、NHKで何度か再放送されている。機会があれば、ぜひ!

 大林監督とはその昔、尾道三部作の第1作「転校生」(1982)の記者会見で初めてお会いして以来、不朽の名作である第2作「時をかける少女」(1983)、富田靖子の寂しげな目が忘れられない第3作「さびしんぼう」(1985)、そして幽霊が魅力的な「異人たちとの夏」(1988)などの記者会見で何度もお会いしている。あれはいつ頃だったか忘れてしまったけれど、大林監督と妻でプロデューサーの大林恭子さん、さらに映画仲間も加わって、屋台でラーメンを食べたことがある。その後、ディープなすすきのにあるおでん屋「もっきりせんたー君町」にお連れした。そこで興に乗られた大林監督は、カラオケで松山千春の「恋」を熱唱。それがとてもお上手なのでびっくりしていると、その横で恭子さんが私に「大林は芸能人のカラオケ大会で優勝したこともあるんですよ」とそっと耳打ちされたことが、今でも忘れられない。監督の歌の上手さにも驚かされたが、内助の功とはこういうものかとしみじみ感心させられたからだ。

 そんな大林監督が、小樽を故郷とする山中恒さんの書き下ろし小説を映画化した「はるか、ノスタルジィ」(1993)を機に、作家性が濃厚で反戦を掲げる問題作に次々とチャレンジされた。しかし、その頃から私はひたすら本づくりの道に突き進み、徐々に映画界と疎遠になり、余り良い映画ファンとは言えなくなった。でも、最後まで映像作家としての人生を全うされた大林監督に、改めて敬意を表すると共に、遅ればせながら謹んでお悔やみ申し上げます。この遺作が公開されたら、いち早く映画館に駆け付ける所存です。

 

狸小路とセコマ

  • 2020.05.14 Thursday
  • 15:25

 わが愛する狸小路に、ようやくセイコーマートがオープン(2020.4.28)した。狸小路2丁目にあるライオンの右隣りで、半世紀余りワイシャツ一筋だった「いとうワイシャツ」の跡である。狸小路の店らしく入口は狭いけれど、奥行きがあって、妙に買い物がしやすい。セコマの地元密着の体質(田舎臭さとでも言おうか)が私に合うせいもあり、前から本州資本のコンビニより古くからの商店街である狸小路には、似合うと思っていた。そう思いながら入ってみると、なんだか店員さんものんびりしていて、急かされない雰囲気がとても良い。しかも、ホットシェフのカツ丼((なかなか旨い!)が、なんと500円。ワインだって、赤のカベルネや白のシャルドネが1本470円だなんて、感動モンだ。そして私が秘かに愛するのは、北海道産の山わさびパウダーを使った「山わさび揚げ」と「北海道山わさび醤油スナック」。どちらも山わさび好きにはうれしく、ウィスキーのつまみにもイケる。東京から来た友人に、お土産に無理矢理持たせたこともある。そういえば、感想は聞いていなかったなあ。

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