巷のシゴダス

  • 2019.09.02 Monday
  • 17:10

 先日、映画仲間のとある女性がオープンしたスナックで、彼女が「おツユに入っていた貝の殻を使ってオブジェを作った」という発言を聞いて、「嗚呼、おツユってもう死語だなあ」ととつくづく思った。私の幼い頃、家では味噌汁ではなく「おツユ」と言っていたからだ。そういえば、「ちょうめん」「ちゃちり」「はなかみ」「ごふじょう」も今は死語だ。若い人の前で「アベック」と言ってもわかってもらえず、カップルのことと言うとやっと理解してもらえるほど。考えてみると、昭和、平成、令和と3つの時代を生き抜いているのだからさもありなん。昔でいえば、明治、大正、昭和を生き抜いた人に似ている。それなら、いっそ「巷のシゴダス」という本を作りたいと願望を述べると、その場に居合わせた人はもろ手を挙げて賛成してくれた。良ーし、この連載を書いているときには必ず、ワン項目作ろうか。

【港のシゴダス】アベック=異性との同伴。特に若い男女の二人連れ。

 

 

最後のひとことが、決まってるヨ。

  • 2019.07.17 Wednesday
  • 18:08

 NHKの連ドラ「なつぞら」が、相変わらず面白い。広瀬すずや山口智子のド派手なファッションが楽しみな上に、ナレーションで最後に放たれるひと言が、抜群に面白い。これは脚本家ではなく,ナレーションを担当しているウッチャンの即興ではないかと疑っているくらいだ。もしそうなら、天才の仕業と言える。

 話題の映画「新聞記者」と「主戦場」をようやく観た。前者は、東京新聞の女性記者である望月衣塑子の同名ノンフィクション小説を基に映画化したもの。若き女性記者とエリート官僚の対峙や葛藤を描く、サスペンス溢れる社会派作品。女性記者を韓国女優のシム・ウンギョン、エリート官僚を今まさに脂がのっている松坂桃李が演じ、両者とも好演。藤井道人監督の気骨ある演出により、「権力とメディア」「ジャーナリズムの姿勢」「組織と個人」、さらに「日本の闇」まであぶり出される。最近では滅多にない、骨太な映画で、感嘆させられた。

 そして後者は、日系アメリカ人のミキ・デザキ監督が、慰安婦問題の論争に隠されたカラクリを検証、分析した2時間10分のドキュメンタリー。肯定派も否定派も巻き込み、日本人はもとより、アメリカ人や韓国人など数多くのインタビューで構成され、見どころ充分。外見だけではわからないことが、色々と解明され、目からウロコ。これまた、考えさせられる作品だった。

 本は、生々しい実像が語られる阿部典英著『ビッキの叫び声』(響文社)、遂に単行本となった桜木紫乃著『緋の河』(新潮社)、川本三郎著『東京は遠かった 改めて読む松本清張』(毎日新聞出版)ほか。川本さんが、その中で傑作と書かれていた長編推理小説『渡された場面』を読んでみると、地方の文学青年の心の屈折が克明に描かれていて、謎解きも複雑で、実に面白かった。時代を超えて愛される松本清張の魅力が良くわかる、一冊だった。

 さて、食べ飲み歩きも相変わらずで、遅ればせながらスープカレーの「イエロー」に舌鼓を打ち、「士別バーベキュー」のサフォークを豪快に喰らい、イタリアン「バールメンタ」で夕暮れ時からで漆黒の闇が訪れるまで、今年も気の利いたツマミとワインを楽しんだ。さらに居合わせた某酒場で、とある酒豪にブレンデッドウィスキー「デュワーズ」の30年をご馳走になり、余りに瓶のフォルムが美しいので空瓶までもらってしまッタ。うーむ。

 

 

 

優れた小説を読んだ!

  • 2019.06.24 Monday
  • 17:48

  仲間に薦められて読んだ小説『颶風の王』が、稀に見る傑作だったので、まだその余韻に浸っている。その名は河崎秋子。別海町で羊飼いをしながら、現在も小説を書いているそうだ。道東を舞台とした馬を巡る3代の物語だが、圧倒的な迫力で描かれる風景描写とストーリー展開に息を飲まれた。これほど土着的な小説は久しぶりで、なぜか敬愛する作家・深沢七郎の世界を思い出させられた。文章の行間からにじみ出る土と馬の匂いは、道産子の魂を強烈に揺さぶる。最後まで緩めることなく、書き上げたそのど根性にも頭が下がる。遅ればせながら、しばらく見守りたい作家である。

 もう一冊、おっとり刀で読んだのが、山本周五郎賞を受賞した朝倉かすみ著『平場の月』。この作家、『田村はまだか』から読んでいるが、ここ数年、ご無沙汰していた。買った本は初版ではなく第8刷にもなっていて、世の人に遅れてしまったが、この人もまた、愛する男のがひたひたと描く染み入るような文章が上手で、つい涙がほろり。古今東西、恋愛小説は男が女の心情を細やかに書き綴ったものだが、最近は女が男の心情を濃密に書けるようになったのだろう。女性の男性化とはこのことで、より繊細な男性に近づいたということかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり知の巨人

  • 2019.05.27 Monday
  • 12:55

 佐伯泰英の原作は読んだことが無いけれど、映画「居眠り磐音」は上出来の時代劇だった。主演の松坂桃李も良かったけれど、最後まで清冽さを失わない芳根京子が素晴らしい。キレの良い演出と松竹ならではの繊細なセット、頑張った殺陣のシーンなど、誉めたい場面は多いけれど、やっぱり沈黙のラストシーンが秀逸。凄いなあと思っていたら、この元木克英監督は木下恵介監督の弟子だった。有名な「陸軍」のラストシーンからヒントを貰ったとインタビューで語っていて、さもありなんと納得させられた。映像とは何かを熟知している監督の映画は、観終わった後、言い知れぬ余韻に浸れるから幸せだ。

 遅ればせながら観た「ROMAローマ」も、そんな一本。主人公が床を掃除するファーストシーンがまるで絵画のように美しく(水滴までも)、それだけで参ってしまう。なぜか、ティオアンゲロプロス監督の「霧の中の風景」の出だしを思い出してしまったほど。ドキュメンタリータッチで描かれるモノクロ映画なのだけれど、モノ言わぬ映像からたくさんのメッセージが伝わってきて、映画ファンである歓びを謳歌できた。とはいえ、海のシーンの怖さは、ヒッチコック顔負けかも。本好きな私としては、本棚が消えた後に書物だけが残された部屋にも感慨深いものがあったなあ。

 最近読んだ本は、島崎今日子著『森瑤子の帽子』、橋本治著『思いつきで世界は進む』(ちくま新書)、『知性の顚覆 日本人がバカになってしまう構造」(日新聞出版)。いつの時代も私にサジェスチョンをくれた橋本治さんが、先だって亡くなり、ショックは大きい。が、残された著作を読んでも、彼の慧眼は時代を超えて生き続けるだろうことがわかる。やっぱり知の巨人である。

 

ハンサム男子の時代

  • 2019.05.13 Monday
  • 11:15

 遊び呆けていた連休中に映画館で観た映画と言えば、「キングダム」1本のみ。中国ドラマに詳しい女友達と、苗穂近くでグルメした後、数ある中から一致して選んだのがこの娯楽作品。私としては、最近の長澤まさみが殻を破って面白い女優になりつつあるので少し期待があったのと、お気に入りの山崎賢人が主役なので多少出来が悪くとも許すという寛容な気持ちで選んだ。ところが、息もつかせずスピーディーに展開されるアクションと物語、そして適材適所に配された個性派俳優たちの魅力に圧倒されてしまった。134分という長時間があっという間に過ぎた。これは凄い。が、やっぱりこれも漫画が原作という。しかも中国ロケで行われたというが、ハリウッドに出しても恥ずかしくない仕上がりである。どの俳優も良いが、とりわけ目を見張らせたられたのが二役を演じた吉沢亮。長い髪が良く似合い、これほどハンサムな俳優が日本にいたのかというほど美しい。ニヒルな面もあって、これから佐藤健に匹敵する程人気の男優になることだろう。もちろん、朝ドラにも出ていて、存在感はあるけれど、これほど凄い俳優とは予想外だ。それにしても、佐藤健、松坂桃李など若くてハンサムな最近の人気俳優は、ほとんど仮面ライダーなどアクションのあるTVドラマ出身だとか。知らなかった。

 ところで、最近のTVドラマは面白いね。窪田正孝主演の医療ドラマ「ラジエーションハウス」や大河ドラマ「いだてん」、朝ドラ「なつぞら」など、見逃せない作品が続出。とりわけ「いだてん」が興味深く、森山未来演じる古今亭志ん生が気になって、遂に名作と言われている結城昌治著『志ん生一代』(上・下巻朝日新聞社)を読んでしまった。これまた、戦争の足音や悲惨な戦時中など、克明な時代背景の下に、アナーキーともいえる志ん生の生き方を描き、時代を超えて素晴らしい本である。

 

 

 

 

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