甦る欲望

  • 2020.04.01 Wednesday
  • 15:55

 いつも「あれが食べたい、これが食べたい」と小うるさい私が、この間だけはダメだった。いつのまにか骨折と風邪(インフルでもコロナでもない)のダブルで10日ほど寝込み、その後も1か月近く使い物にならなかった時のこと。何しろ、腰の激痛で1ミリ動かすのも大変だった。それでも痛み止めを飲むためには、少し何か食べなければならない。最初のうちは友人や息子にサンドイッチや弁当を買ってきてもらって無理やり食べたが、それも尽きると、自分で作らなければならない。すると、全く何も食べたくないのだ。口に入るのは、せいぜいおかゆとお茶漬け、お餅ぐらいのもの。おかげでたったの10日間で3キロも痩せた。ダイエットでは、3年がかりで2キロしか減らなかったというのに‥‥‥。最高のダイエット法は、食べないことだ。

 そんな折、大阪の兄が大阪名物の昆布や京都のちりめん山椒、シングルモルト(なんとボウモア18年)などを送ってくれた。先日、1か月もアルコールを断っていたので、恐る恐るボウモアをロックで少し飲んでみると、これが実に旨い。ならばツマミをと冷蔵庫を探すと、暮れに貰った「フェカリダエクストラ」(スペイン産白カビのサラミ)の食べかけが見つかった。薄切りにして食べてみると、久しく肉系のものを口にしていないせいか、これまためちゃ旨い。シングルモルト&極ウマサラミのお蔭で、すっかり元気を取り戻した。やっぱり、「あれが食べたい、これが食べたい」と思う間は、仕事にも励めるもの。人間の三大欲望(性欲、食欲、名誉欲)の中で食欲が無くなれば、「生きている価値も無い」と、つくづく思ったものだ。オオゲサだったかな。

  ところで、巣籠りの最中に読んだ石弘之著『感染症の世界史』(角川ソフィア文庫)は、恐怖におののいてしまう本だった。昔のペストや西アフリカのエボラ出血熱など、これまで人類を脅かしてきた感染症について、詳しく書かれているからだ。例えば、新コロナウイルスについては、2003年のSARSや2012年のMERSのウィルスが世代交代を繰り返して生まれた新種であるという。しかも、人類において唯一の天敵が病原性の微生物で、人類の歴史は20万年だが、微生物は40億年を生き抜いてきた強者だと言い切るから怖い。また、書棚から昔読んだカミュの名作『ペスト』も取り出して読んでみたが、数ページで止めた。やっぱり、読書も心身ともに元気な時に読む本とそうでない本に分けた方が良いだろう。

価値ある100円

  • 2020.03.13 Friday
  • 17:19

 最近、『これがこんなに安い値段で良いの?」と、つい大声で叫びたくなったのが、新潮社のPR誌『波』だ。以前は懇意にしている書店さんから無料で頂いていたのだけれど、閉店したため手に入らなくなった。が、昨年読んだ、ブレイディみかこ著『ぼくはイェローでホワイトで、ちょっとブルー』が余りに面白かったので、まだ連載が続いている『波』を定期購読してみた。年間購読料がなんと1000円だから、一冊100円にも満たない。しかし、内容の充実ぶりにたまげてしまった。ブレディみかこさんの連載は3月で終了したが、冒頭では阿川佐和子さんの食エッセイ、後ろには川本三郎さんの「荷風の昭和」が連載され、3月号では敬愛する小林信彦さんも登場。2月号だったと思うけれど、急逝された坪内祐三さんの追悼ページをすぐさま設けるなど、中身の充実していることこの上ない。座談会や対談も中身が濃く、これが一冊100円以下で読めるなんて、活字中毒者には望外の悦びだ。

春はまだか!

  • 2020.03.11 Wednesday
  • 17:19

 日に日に陽射しは強くなるのに、気は滅入るばかり。酷い腰痛で倒れ、10日近く寝込んでしまった。同時にインフルでもコロナでもない風邪にやられ、ダブルで病に侵された。整形のMRI検査で分かったことは、桃井かおりさんが宣伝に一役買っているいつの間にか骨折だそうで、背中の関節が1本圧縮されてしまったとの事。激痛はそのせいだったらしく、これから時間をかけ、骨粗鬆症の手当てをしなければならないそうだ。ったく、いつどんな病に襲われるかわからない。もう歩けるようになったから良かったけれど…。

 それにしてもコロナのせいもあって、巣ごもり生活が続く。こんな時は、たまったDVDや本を読むしかない。そこで、何を読めば良いか迷う人に、ここ数年に読んだ中からおすすめ本(文庫&新書)5冊をこそっと教えたい。

 

―嫺太一著『天才 勝新太郎』(文春新書)

※天才としか言いようがない俳優・勝新太郎のすべてがわかり、私はこの本のせいで座頭市シリーズの映画を全て観てしまった。

 

太田和彦著『居酒屋吟月の物語』(日経文芸文庫)

※居酒屋好きと映画好きは、読むだけで癒される小説。役所勤めの主人公が迷い込んだ町に、週に1回古い映画を上映する映画館があり、その後に立ち寄る居酒屋には映画の登場人物に似た人が居た…。この本のおかげで観ることが出来た清水宏監督作品「小原庄助さん」「(1949)における俳優大河内傳次郎のアクションシーンの素晴らしいこと!

 

獅子文六『コーヒーと恋愛』(ちくま文庫)

※昭和の作家として再評価を得つつある獅子文六による、軽妙な恋愛ユーモア小説。コーヒーを淹れたらピカイチと言われる人気女優のモエ子43歳の主人公が織りなすドタバタ話だが、実に愛らしい。

 

げ郎蟒子著『颶風の王』(角川文庫)

※今は引退したが羊飼いをしながら書いた小説で、2014年に三浦綾子文学賞を受賞。馬を書かせたらこの人しかいないと思わせるほど描写が素晴らしく、土着文学の白眉とでも言おうか。

 

チ田俊也著『北海タイムス物語』(新潮文庫)

※新刊だった時の文庫を買い逃し、いつか買おうと思っていたら、古本のアダンノンキで単行本を見つけ、夜通しで一気に読んでしまった。身近なタイムスの話であると同時に、いかに残酷な活字業界がこの地にあったかという事実を知り、茫然とした。これほどまでに酷かったとは…、涙無くして読めない。

 

という訳で、未読の方はぜひ! (これを機に活字中毒になってもらえたら、嬉しいなあ)

 

 

 

 

 

 

懐かしき「ゆりや食堂」

  • 2020.01.07 Tuesday
  • 17:53

 裏参道の近くに立ち寄ったので、移転してしまった「ゆりや食堂」の跡がどうなっているのか確かめに行ってみた。するとその場所は更地になっていて、建物の跡形もない。なんだか懐かしくなって、ランチを軽く食べた後にも拘わらず、移転先の「ゆりや食堂」を訪れてみた。住所は前と同じ南1西19で、「青山とうふ店」の真向かいにあり、ビルの1階にあるにも拘わらず、建物の外観は前とそっくり。大衆食堂の鏡みたいな風情なのだ。暖簾を潜り抜けて中に入り、ラーメン500円を頼む。連れ合いの女友達は目ざとく小ラーメン400円を見つけ、やっぱり頼む。さっぱりした出汁のしょうゆ味は変わらず、少し縮れた堅めの麺を味わいながら完食した。

 帰り際、店主に挨拶するためにレンジへ向かうと、すぐそばの壁にこの絵(コンビを組む松本浦さんが書いた)が飾られていた。店主は、あの時は「立ち退きで移転することになるとは考えてみませんでした」と話す。確かに私も記録に残しておきたいと、取材拒否だった彼を説得して、やっと取材許可が出たことが思い出された。あれは3年前の話だっただろうか。その後、この店はテレビでも紹介されていたので、取材が難しかったことは余り知られていないが、私としては数年かかって口説いたことを忘れられない。ともあれ、前の店舗の画が残っていることは希少だ。大正期の木造2建てで、元は銭湯だったそう。今も猛スピードで古い建物が街中から消えているけれど、文と画で残しておいて良かった。また、この新「ゆりや食堂「」が、いかに以前のイメージを壊さないように努力しているかがわかるはず。見比べて貰いたいものだ。

 

ロングセラーの底力

  • 2019.12.11 Wednesday
  • 17:57

 長く売れ続けている製品の中には、やっぱり良い品があるっもだとつくづく知らされる今日この頃だ。不精の私にとって、洗顔は1日の中で、一番面倒くさい作業である。若い頃は、酔っぱらってそのまま寝てしまうこともしばしばだだったが、今はそういう訳にはいかない。厚化粧ではないけれど、少し塗りたくった部分を取り除き、さらに市販の洗顔料で洗うのだが、後がすっきりしないので、ある時からさらに石鹸で洗っていた。ところが、雑誌クロワッサンで発見した「ロゼット洗顔パスタ」がとても良いのだ。

 値段が安いこともあって(小さいサイズで375円だったかな)、近くのスーパーマーケットで買って試してみると、これが素晴らしい。洗顔後、肌がさっぱりするのだ。石鹸を使った後と同じぐらい気持ちが良く、すっかりファンになってしまった。こうして庶民は、生活防衛するのだ。税金を湯水のように私的に使う人には、この喜びがわからないだろうなあ。

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