喫茶店グラフイティー余話

  • 2020.07.16 Thursday
  • 17:31

 私の青春時代(1960年代終わりから70年代初め)において、喫茶店と映画館はデートの場所だった。恋人と喫茶店で待ち合わせ、ひとまずコーヒーを頼む。喫茶店のドリンクの中で一番低価格だったのがブレンドコーヒーで、一番高価だったのがレモンスカッシュ(通称レスカと呼んだ)。いつもビンボーだったからそれは飲めず、食事メニューがあったとしても懐に頼む余裕は無かったから、一杯のコーヒーで何時間も過ごした。

 その頃のコーヒーは豆が良くないせいか余り美味しくなかったのと、甘いものに飢えていたこともあり、大抵は砂糖を入れて飲んだ。恋人同士の場合、男性に「幾つですか?」と女性が訊ね、好みの量をシュガーポットからスプーンで掬って入れてあげる。平均はスプーン2杯半だけれど、そう聞かれて「自分の年令を答えた」という輩も居て、こういうタイプは、大抵は恋が成就しない。また、メニューにある「ウィンナーコーヒー」に、ウィナーソーセージがのっかって出てくると思っていた輩も居たっけ。

 そういう私も、生まれて初めて本格的な「カプチーノ」を東京の神田にある有名な喫茶店で、とある出版社の社長さんにご馳走になった時は感動させられた。エスプレッソに泡だてた牛乳(多少のココアも入っていたらしい)が加わり、出されたカップ&ソーサーになんと棒状のシナモンがついてきた。それでコーヒーをかき混ぜながら飲むのだと教わった。

 ウェッジウッドだったか、ロイヤルアルバートだったかはわからないが、ゴージャスな花柄のカップで出され、余りの旨さに陶酔させられたものだ。エスプレッソと牛乳と少量のココアと特有のシナモンが、見事なバランスで混合され、実に見事だった。出版社を設立したばかりなので、80年代終わりのことだったろうか。

 以来、余り飲む機会は無かったが、朝日新聞の連載の最後に取材で「宮越屋珈琲パリアッチ店」を訪れた時、いつもは頼まないのに何故かカプチーノを頼んでしまった。店主の蔵隆司さんがイタリア製マシンを使って独自に豆を混合しているというので、飲みたくなってしまったのだ。それがまた、私好みの繊細な味わいで、神田で飲んだカプチーノを思い出させるぐらい素晴らしかった。が、私が訪れたのは閉店3日前だったので、もう飲むことは出来ない。

 それは残念だったが、この店は「喫茶つばらつばら」の女性オーナー出村舞さんが、リニューアルして去る4月16日に「喫茶つばらつばらクラシック」としてオープン。先日、立ち寄ってみると、真紅のビロード張りの椅子が目にも鮮やかで、そこかしこに彼女のセンスの良さが光り、ネルドリップで丁寧に淹れるブレンドも実に美味しかった。カプチーノは飲めなかったけれど、店舗デザイナーの今映人さんが設計した店内の大きな窓から正面に見える藻岩山麓と右手に望める円山をじっくり眺めた後、満足感に浸りながら帰った。

 

 

 

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