ロングセラーの底力

  • 2019.12.11 Wednesday
  • 17:57

 長く売れ続けている製品の中には、やっぱり良い品があるっもだとつくづく知らされる今日この頃だ。不精の私にとって、洗顔は1日の中で、一番面倒くさい作業である。若い頃は、酔っぱらってそのまま寝てしまうこともしばしばだだったが、今はそういう訳にはいかない。厚化粧ではないけれど、少し塗りたくった部分を取り除き、さらに市販の洗顔料で洗うのだが、後がすっきりしないので、ある時からさらに石鹸で洗っていた。ところが、雑誌クロワッサンで発見した「ロゼット洗顔パスタ」がとても良いのだ。

 値段が安いこともあって(小さいサイズで375円だったかな)、近くのスーパーマーケットで買って試してみると、これが素晴らしい。洗顔後、肌がさっぱりするのだ。石鹸を使った後と同じぐらい気持ちが良く、すっかりファンになってしまった。こうして庶民は、生活防衛するのだ。税金を湯水のように私的に使う人には、この喜びがわからないだろうなあ。

年の瀬は少しブルー

  • 2019.12.03 Tuesday
  • 18:37

 12月に突入した途端、焦りが浮上し、あくせくと動き回っている。と言いながら、腰痛で土・日の2日間、予定をキャンセルして寝込んでいた。こういう時間が意外に貴重で、読書が進んだり、ボーっとしつつもカーテンを洗濯したりと、雑事もこなせたりして。かなり怠惰な時間を過ごしたせいで、大分前に読み終わっていた河秋子さんの新作『土に贖う』(集英社)の感想をようやく書けるかな。この小説集は、養蚕、ミンク、薄荷、アホウドリ、蹄鉄、レンガ造り、陶芸という土にかかわる仕事を主とした7編の短編からなる。『颶風の王』の時もそうだったけれど、馬の描写が抜群に巧い。7編の中でもも「うまねむる」は、装蹄を職業とする親子2代の物語だが、登場する馬の鼻息や黒く潤む目や臭気が伝わって来るほどリアル。田舎町に住んでいた頃の馬具屋さんが思い出され、感心させられた。良く出来たストーリーで、背筋が寒くなったのは、ミンクの養殖を描いた「頸、冷える」。主人公が陶芸家として土と向き合う「温む骨」の描写力も素晴らしく、ひとつひとつ慈しむように読ませてもらった。

 ノンフィクション「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(新潮社)は、「波」に連載されているものをまとめたものだというが、著者であるブレディみかこさんの視野の広さに感服させられた。大人の凝り固まった常識を打ち崩す子供たちを受け止める包容力と観察眼の鋭さにも脱帽だ。

 ところで、わが亜璃西社が8月に刊行した河井大輔著『さっぽろ野鳥観察手帖』の評判がすこぶる良い。日本野鳥学会の会報誌「野鳥」(11月号)の書評で、松田道生さんが、「『ある一都市専用の図鑑が出版される時代になった』と思うと、感慨深いものがあります」、さらに「本書のような図鑑が各地で出版されるようになれば、初心者がよりバードウォッチングを楽しむことができると思います」と絶賛してくれた。うれしいことこの上ない。寒くなると気分が少しブルーになるものだけれど、少しイェローになったかな。

 

 

 

サディズムを感じる時

  • 2019.10.28 Monday
  • 17:57

 

 どうでも良いことだけれど、東京土産に頂いた「ひよっこ」を頭からかぶりつく時、いつも私は自分がサディストなんだなあと思う。下の方から少しずつかじって,最後に頭に到達するという優しい食べ方が出来ないからだ。嗚呼!

 久しぶりに、札幌芸術の森美術館まで出かけてきた。赤や黄色で染まった庭の紅葉が余りに素晴らしく、しばらく見惚れてしまった。いつもはオフィスと自宅、酒場、映画館を回遊している私にとって、自然に接することはひとときの安らぎ。が、目的は「奇蹟の芸術都市 バルセロナ展」と銘打つ展覧会で、それほど期待していたわけではなく、閉館前の駆け込みだった。

 しかし、こちらも素晴らしかった。ガウディとミロとダリとピカソの作品を同時に観られるなんて、凄い話。そのキーワードが、「カタルーニャの前衛運動」というのも面白い。ダリやガスクなどが1928年にバルセロナで発行した、<黄色宣言(カタルーニャ反芸術宣言>のパンフレットが、会場のショーケースの中に展示されていて、実に興味深かった。当時のカタル−ニャの文化状況に対する反逆の精神に満ち溢れたもので、彼らはそれを「危険なもの」「偽のもの」と呼んで糾弾。当時の知識人たちを挑発する一方で、ボクシングやテニス、ジャズや現代音楽など新たな大衆文化を賞揚し援護したという。停滞した文化状況の攪乱が目的で、彼らが目を向けたのは芸術の先端都市だったパリであるとか。歴史は繰り返されるというけれど、いかに前衛的なアーティストが、その時代のそこに存在したかわかるというものだ。

 その翌日、歴史的建造物の豊平館で2019年度・第8回「北の聲アート賞」の贈呈式が行われ、初めて参加させてもらった。柴橋伴夫さんが代表の「サッポロ・アートラボ」が、主管という形で行われ、大賞に準じるきのとや賞、奨励賞のビルタップ賞などがあり、中でも瞠目させられたのは、特別賞(ハルニレ賞)に、2010年スタートの「草森紳一蔵書プロジェクト」が選ばれていたこと。これは、迷著『本が崩れる』でも知られる、亡くなった草森紳一さん(音更町出身)が残した32,000冊もの蔵書を保存して後世に活用しようという稀有な試み。帯広大谷短期大学が中心となり、ボランティアスタッフで運営しているという。その活動などを報告する通信も発行していて、感心させられた。

 最近,遅ればせながら観た映画は「ジョーカー」。主役のアーサーを演じた俳優ホアキン・フェニックスが、若くして急逝したリバー・フェニックスの弟であると初めて知った。狂気をこれだけ演じきれるとは、凄い俳優だ。せっかく構築したストーリーが後半には崩れてゆくが、この人の演技だけは屹立していた。なぜか、シャイニングのジャック・ニコルソンを思い出してしまった。

 

 

 

巷のシゴダス

  • 2019.09.02 Monday
  • 17:10

 先日、映画仲間のとある女性がオープンしたスナックで、彼女が「おツユに入っていた貝の殻を使ってオブジェを作った」という発言を聞いて、「嗚呼、おツユってもう死語だなあ」ととつくづく思った。私の幼い頃、家では味噌汁ではなく「おツユ」と言っていたからだ。そういえば、「ちょうめん」「ちゃちり」「はなかみ」「ごふじょう」も今は死語だ。若い人の前で「アベック」と言ってもわかってもらえず、カップルのことと言うとやっと理解してもらえるほど。考えてみると、昭和、平成、令和と3つの時代を生き抜いているのだからさもありなん。昔でいえば、明治、大正、昭和を生き抜いた人に似ている。それなら、いっそ「巷のシゴダス」という本を作りたいと願望を述べると、その場に居合わせた人はもろ手を挙げて賛成してくれた。良ーし、この連載を書いているときには必ず、ワン項目作ろうか。

【港のシゴダス】アベック=異性との同伴。特に若い男女の二人連れ。

 

 

最後のひとことが、決まってるヨ。

  • 2019.07.17 Wednesday
  • 18:08

 NHKの連ドラ「なつぞら」が、相変わらず面白い。広瀬すずや山口智子のド派手なファッションが楽しみな上に、ナレーションで最後に放たれるひと言が、抜群に面白い。これは脚本家ではなく,ナレーションを担当しているウッチャンの即興ではないかと疑っているくらいだ。もしそうなら、天才の仕業と言える。

 話題の映画「新聞記者」と「主戦場」をようやく観た。前者は、東京新聞の女性記者である望月衣塑子の同名ノンフィクション小説を基に映画化したもの。若き女性記者とエリート官僚の対峙や葛藤を描く、サスペンス溢れる社会派作品。女性記者を韓国女優のシム・ウンギョン、エリート官僚を今まさに脂がのっている松坂桃李が演じ、両者とも好演。藤井道人監督の気骨ある演出により、「権力とメディア」「ジャーナリズムの姿勢」「組織と個人」、さらに「日本の闇」まであぶり出される。最近では滅多にない、骨太な映画で、感嘆させられた。

 そして後者は、日系アメリカ人のミキ・デザキ監督が、慰安婦問題の論争に隠されたカラクリを検証、分析した2時間10分のドキュメンタリー。肯定派も否定派も巻き込み、日本人はもとより、アメリカ人や韓国人など数多くのインタビューで構成され、見どころ充分。外見だけではわからないことが、色々と解明され、目からウロコ。これまた、考えさせられる作品だった。

 本は、生々しい実像が語られる阿部典英著『ビッキの叫び声』(響文社)、遂に単行本となった桜木紫乃著『緋の河』(新潮社)、川本三郎著『東京は遠かった 改めて読む松本清張』(毎日新聞出版)ほか。川本さんが、その中で傑作と書かれていた長編推理小説『渡された場面』を読んでみると、地方の文学青年の心の屈折が克明に描かれていて、謎解きも複雑で、実に面白かった。時代を超えて愛される松本清張の魅力が良くわかる、一冊だった。

 さて、食べ飲み歩きも相変わらずで、遅ればせながらスープカレーの「イエロー」に舌鼓を打ち、「士別バーベキュー」のサフォークを豪快に喰らい、イタリアン「バールメンタ」で夕暮れ時からで漆黒の闇が訪れるまで、今年も気の利いたツマミとワインを楽しんだ。さらに居合わせた某酒場で、とある酒豪にブレンデッドウィスキー「デュワーズ」の30年をご馳走になり、余りに瓶のフォルムが美しいので空瓶までもらってしまッタ。うーむ。

 

 

 

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